幸福の「資本論」     橘玲 2017年

 プロローグ あなたが今ここに存在する事がひとつの奇跡

 世界を見渡すと日本は住み易い国である。経済的な恩恵、戦争が70年にも渡って生じていない。これは当たり前の事ではない。このメリットを享受しないのはおかしい。しかし、人間は幸せを目指して生きているが、幸せになる様にデザインされている訳ではない。金融資産、人的資産、社会資産の3つの観点で幸せを設計していく

0パート「お金持ち」と「貧乏人」の三位一体幸福論年

 人間が幸せと感じるには、お金がある事、自分が稼げる事、友人がいる事の3つをあげている。これを各々、金融資本、人的資本、社会資本と呼んでいる。この3つの資産の有無をパラメータに8つのパタンを示している。
 3つ全てある超充
 人的資産と社会資産があるリア充
 金融資産と社会資産がある旦那
 金融資産と人的資産があるお金持ち
 金融資産だけの退職者
 人的資産だけのソロ充
 社会資産だけのプア充貧困
 全てない貧困
の8通りである。金融資産は預貯金、株、債券等の金融資産高であり、人的資産は自分の労働によりどの程度稼ぐ事ができるかの指数であり、社会資産は友人や仲間との繋がりを意味する。この中でも、昨今貧困女子に焦点を与えている。金融資産、人的資産、社会資産全てを共に持たない女子の割合が過去に比べ多くなりつつある。この理由の1つに風俗関連のデフレが挙げられる。一昔前なら、女子であれば風俗関連で働けばお金を稼ぐ事ができた。しかし、最近では外観が良くないと稼ぐ事ができない。風俗関連の需要が低下して供給過剰になりつつある。この様な背景で貧困女子が増えつつある。仲間が多くいれば、社会資産が増え幸福度は上昇する。これが、プア充である。最も不幸な状態が、精神障害、発達障害、知的障害を持つ女子達である。この様な女子は風俗でも稼ぐ事が、出来ず最貧困となってしまう。

1.自由の為の金融資産

 金融資産は、日々の生活の中で経済的独立を得る為に考えるべき内容である。no money no freedom (お金がなければ自由もない) アメリカの富裕層は白人•アングロサクソン•プロテシタントが多いイメージがあるが、案外、ロシア•スコットランド•ハンガリー等からの移民の一世が多い。日本では、富裕層になるには共働きが効率的で、税金対策として個人と法人の二刀流が効果的てある。お金はあればある程、幸せ度があがるかというとそうではなく、年収なら2人世帯で1500万、資産1億以上は頭打ちになり、これ以上お金に執着しても余り幸福度ら向上しない。「お金の事を考え過ぎると不幸になる」といのは事実である。この顕著な例が、貧しい人達である。毎日、生活費で苦しめられるのは当然、幸福度は上がらない。ある一定以上の富裕層になったら、社会貢献活動に寄付すると幸福度は確実に向上する。マイナス金利の低成長な時代では金融資産よりも人的資産である労働による収入が大きな影響を持つ。日本の経済的な状況から世界の株に投資する事は価値がある。「タマゴをひとつのカゴに盛るな」の格言は優れた言葉である。

2.人的資本は、富の源泉

人的資本、言い換えると、自分の労働から富を手に入れる事がである。しかし、仕事とは単にお金を稼ぐだけでなく自分のありたい姿になる、自己実現の側面を有している。収入は多ければお会い程、良い。同じ収入なら安定していた方が良い。
 ①クリエィティブジョブとマックジョブ
 新しい働き方は、知識社会化、グローバル化、リベラル化の3つのキーワードが重要な役割を持つ。知識社会とは、イノベーションを起こす事のできる優秀な人材が活躍する社会の事であり、グローバル化とはこの優秀な人材の活躍の場が世界である事を意味する。リベラルとは、肌の色、性別、LGBT+等で差別する事なく社員を平等に扱う社会を述べている。Googleの様なIT業界でかちのこるには、深い知識を持ちグローバルに活躍でき、その門戸は全ての人にオープンである必要があると言う事である。今、このリベラル化に対して反動が生じている。中流の崩壊である。トランプが何故支持されるのか?それは、移民に職を奪われた中流であり、女性の上に立つ事を当然とてきた男性達である。これまでの利権を失う事に脅威を感じている人達である。もし、この人達が深い知識を持ちグローバルに働けたらこの様な感がえ方にはならない。しかし、この現象は日本でも同様である。正社員として高い収入が保証され終身雇用であるというのは、全く同じ現象である。であるので、日本企業は競争力を失っているのである。企業であれ個人であれ知識社会に適応できなければ脱落するのである。マックジョブとは、ルーティーンジョブであり、定型的生産である。クリエィティブジョブには、2つの分類があり、1つは仕事が拡張可能なクリエーターともう一つは、拡張不可能なスペシャリストである。清掃作業は一見するとマックジョブであるが、アンケートを清掃作業者にすると一定数、清掃作業に誇りを持ち仕事の仕事に意義を見出している人が存在する。
 ②サラリーマンという生き方
 仕事には2種類ある、1つはジョブ型、もうひとつは、メンバーシップ型である。ジョブ型では仕事は何ができるか?何を求められているか?によって決まる。経理の仕事であるなら、もし経理の人材が不足したら社外から経理に優れた人材を採用する。これに対してメンバーシップ型は、その組織の一員である事が重視される。日本企業てよくある正社員として採用された人と派遣等の非正規社員がこれに当たる。同じ仕事をしても給料、待遇は全く異なる。日本型企業で仕事に対して自己実現を求めても実現しない可能性が高い。こな状態は身分制度にも通じる内容である。また、企業としては定型的作業を正規社員から非正規社員にシフトする事で企業体質の強化を推進すると予測される。ポジティブ空間とネガティヴ空間の2つの空間を比較している。ポジティブ空間は、バザールと呼び、これは誰にでもオープンに仕事が開放さらていて、良い評判も悪い評価も自己責任であるが、何度でもチャレンジできる空間であり、できるだけ目立ってたくさんの評判を獲得する事を目指している。ネガティヴ空間は、伽藍と呼び一度ミスをすると挽回が非常に困難な閉鎖的空間である。この様な空間では、できるだけ目立たず匿名の鎧を身に纏い悪評を避ける様に生きていくのが習性となる。日本型企業は伽藍的な組織風土であり専門性が求められるホワイトカラー、定型的業務のブルーカラー共に平等な正社員でありプロフェッショナルにはなっていない。全員がジェネラリストであり厳しい競争にさらされているIT関連の仕事をしている場合、素人同然の上司が何も知らない新人を翻弄して疲労させメンタルに陥らせている。これが、日本的経営の実態である。日本的経営は従業員の会社への高い忠誠心のイメージがあるが、事実ではない。もはやその様な意識は低く多くの社員が会社に対して不満を持ちあきらめの感情を持つに至っている。しかし、若者の一括雇用は世界的にも稀で日本の若者は新卒の際に就業のチャンスが多く仕事を覚える機会に恵まれている。他の国ではでは若者の失業率が高い事を考えると大変優遇されていると言える。この状態で50,60代まで働くと人的資産を失い、且つ、退職金の低下、及び、年金の引下げのダブルパンチで人生100年時代を送るのは大変厳しいと言える。
 ③ONLY ONE で NO ONE の戦略
 生物の長い歴史では尖ったキャラが生き残りの戦略であった。異性に選ばれるには尖った個性が必要である。好きな事に人的資産の全てを投入する、これが基本戦略である。ゾウリムシから学んだ事は、自分が生き残る事のできるニッチな領域を見出す事である。この事から、弱者の3つの戦略を導いている。
 •小さな土俵で勝負する。大きくて強い相手が来ない領域で生き残る。
 •複雑さを味方にする。シンプルなゲームは強者の独り勝ちになる。
     ルールを複雑にして強者に勝つのである。
 •変化を好む。大きな安定した空間は、強者しか生き残れない。

大企業は何を内製化し、何を内製化しないのか?これは、内部コスト次第である。大きな組織は、ある事をするのに大きなコストがかかり分業した方が効率的てあるゾーンが存在する。また、大企業では仕事を標準化する事でコスト低減するが、一方で、この姿勢はイノベーション能力を失う。両立は大変難しく、結局、イノベーションの外注化が行われた。スタートアップでアイデアを作り、これが成功する直前に大企業が、このスタートアップを買う事で大企業のイノベーションは維持されている。日本企業からイノベーションが起こり難いのは、雇用の流動性がない社会では失敗が致命症になる可能性が高い事とその様なリスクが割に合わないのである。また、日本企業はその内部に多様性を見出せないので発想自体が乏しくイノベーションは生じにくい。
スタートアップ自体も日本社会では存在し難く、日本全体を通じてイノベーションが生じにくい。このイノベーティブな仕事は外注化されていくが、個人としての基本戦利は、
①好きな事に人的資本の全てを投入する。
②好きな事をビジネス化できるニッチ領域を見つける。
③官僚化した組織との取引から収益を確保する

の3つである。これを、35歳までに実現して退年という強制解雇から身を守るのである。s
 ④超高齢化社会の唯一の戦略
 超高齢化社会の唯一の戦略は、老後を短くする事である。老後の定義は、人的資産を全て失った状態であり、労働により稼げなくなった状態である。人生は男性なら90歳までに98%は亡くなる。女性なら95歳までに99%がなくなる。この年齢を自分の寿命と考え準備計画する必要がある。この様な超高齢化社会では、好きな事を仕事にして定年後に企業して第2の青春を謳歌する事が幸せに最も近いと言える。

幸福の為の社会資本

①友達とはなんだろう?
「幸福」は社会資本からしか生まれない。人類の長い進化の歴史からこれは導かれた。赤ん坊が泣く事、生まれた子供を育てる事、集団で外敵と戦う事、等の家族、仲間の存在は極めて大きく、これを失う様な状態に陥ると人間は確実に不幸を感じる。人的資本、金融資産は必要な物ではあるが、人間が幸せを感じる事では社会資本による所が大きい。社会空間には、愛情空間、友人空間、貨幣空間の3つがあり、愛情空間と友人空間は政治空間とも言われる。愛情空間は人生の重みが80%,友情空間は19%、貨幣空間は1%程度の重みと考えて良い。友情空間は、かって人類が野生で暮らしていた際、集団で行動しないと他の獰猛な動物に食べられてしまう。この恐怖心は現在でも人間の心に残っていて、仲間外れにされる事を強く希望する。友情空間の代表的な集団は都会では会社の同期入社組、ママ友がある。また、田舎では小学校からの続きであるイツメンが挙げられる。これらに共通な点として、「平等体験」がある。この平等体験は、学校や会社に入った時、皆が平等に見知らぬ人同士だったが、いつの間にか、友情を構築していったという共通の経験を有するというのが、仲間として長く続くのである。モラル体系について説明している。「市場の倫理」と「統治の倫理」の2つがある。これはお金儲けと権力よく似たている。統治の倫理では、戦いの中で相手を殺し自分が1番の勝者になる事であり、市場の倫理では、必ずしも1番になる必要はない。ほぼ裕福になれれば人は幸福を感じる事ができる。

②個人と間人
個人主義とは、欧米に代表される様な、個人が責任と権限を持つ社会をいう。間人とは、集団や人間関係を気にする社会をいう。日本企業は、新卒の若い段階から組織に貢献する、仲間や同僚との関係を大切にする様に教え込む。自分の業務だけでなくチームとしての成果を考える様になり、後工程はお客様の意識が日本的といえていたが、アメリカでもこの考える方が浸透してきて、その結果、アメリカ人の労働時間が世界で1番になった。この考えはキリスト教のプロテシタントの教義にも通じている。この間人的な働き方は職場での強い絆を作り良い面もあるが、長時間労働や過労死とも関連し問題視されている。自己決定権での人間の満足感は幸福度向上には大変重要である。日本的経営である終身雇用、年功序列は閉鎖的社会を形成し、その結果、人生をどの程度自由に動かす事が、できるか?と言う国際比較で日本は、調査57カ国中、57位の最下位である。正規社員と非正規雇用という身分制度、職場という伽藍に閉じ込まられている状態といえる。この様な伽藍の中での閉塞感こそが、日本のサラリーマンが会社を憎悪する根源となっている。

③うつは日本の風土病なのか? 
 日本人の幸福度に遺伝子レベルでの考察が進んでいる。脳内物質にセロトニンがある。これはハッピーケミカルと言われる物質で気分の安定に重要な働きをすると言われている。このセロトニンを運搬する遺伝子にはLL,SL,SSの3型ある。L遺伝子はセロトニン運搬能力が高く、S遺伝子はセロトニン運搬能力は低い。日本人の97%はSL,SS型である。セロトニン運搬能力が低い事の心への影響は、ストレスに敏感である事である。日本を含むアジアでは農耕社会を築き閉鎖的共同体を構成しストレスフルな人間関係に適応できる人が役立ち、適応出来ない人は長い年限を経て脱落していき97%がSS,SL型に至ったと推定する。この型の人は環境的ストレスに対して敏感で良い環境にいる場合は高い適応力を示し、悪い環境にいる場合は、不適応になりやすい。日本人に鬱が多いのはこれが大きな影響を、持っていると考えられている。また、メランコリー親和型と言う学説があり、真面目、几帳面、責任感が強い、周囲の目を気にする、人間関係のトラブルを嫌う等の性格が鬱病に影響するという説もある。しかし、昨今は遺伝子レベルでの解説が主流になってきている。

④幸福になれるフリーエージェント戦略
「幸福な人生の最適ポートフォリオ」は、次の3点である。
第1は、金銭的に自由な状態である事
    これは、金融資産が一定以上あり経済的に独立している事を意味する
第2は人的資本であり、会社と言う伽藍に閉じ込められている状態ではなく
    仕事で自分の好きな事に集中できている状態を意味する。
第3は社会資本であり、人間関係を意味する。配偶者との関係、家族かとの交流等を大切にしつて、人としての強い繋がり、絆を強くする。一方、外の世界とは強い繋がりはある特定の組織に依存しすぎない様に調整する事である。
 会社、地元、ママ友等の強い繋がりに依存する生活をすると、その繋がりを失った場合、大きな損傷を受ける事になる。会社では、定年で人的資本、社会資本を同士に失う事は大変大きな痛手となる。この様に、一局集中しない分散的な考えが「幸福な人生の最適なポートフォリオ」と言える。この結論を導く中で、参考とされているのが、アメリカに台頭する新上流階級のBOBOS(bourgeois bohemians )である。高学歴、リベラルな都市に暮らし、豪華な暮らしを軽視し、ハイテクに囲まれながらも自然で素朴な物に西最高の価値を見いだす人々を紹介している。この他にも日本の東京では、フットサルに1人で参加して仲間を形成せずに、そのゲームのみを楽しみ強い繋がりを作らない傾向があるとの指摘も昨今の社会の変化を物語っていると思われる。また、アメリカでの集団ヒステリーでは人はそばにいる人の影響を受けやすい事を示している。幸福も不幸も伝染するので誰とどの頻度で付き合うはよく考える必要がある。友達のポートフォリオは重要である。縦軸はやり甲斐、横軸を収入安定性として公務員、自営業者、サラリーマンをプロットするとその業種の特徴を示していると説明している。公務員はやりがいは低いが仕事が安定している事で満足感が高く、自営業者は収入は安定していないが、やりがいが高い事で満足感が高い。サラリーマンは、倒産の危機もあり安定性が失われ、且つ、伽藍の中での自己決定権がない事の両面で幸福度が低い状態である。

⑤「本当の自分」はどこにいる?
本当の自分は過去の自分の幼い友達グループの中で選びとった「役割=キャラ」である

⑥それでも幸福になるのは難しい
 幸福な人生への最適戦略とは、
・金融資産は分散投資する
・人的資本は好きな事に集中投資する 
・社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散投資する

 マイケルジャクソンは何故麻酔薬の過剰投与を希望したのか?コンサートの前の極端なプレッシャーは何故生じるのか?宝くじに当たった人は何故不幸になり易いのか?幸も不幸も慣れてしまう。幸福が長く続くと、その幸福には慣れていまい、まだ獲得していない何かに囚われる事がある。マイケルの場合はコンサートがうまくいくか否か?であり、宝くじの当選者はお金がある事から来る人的資本(労働意欲の低下)、周りの人を信じられないと言う社会資本の喪失、金融資産も怪しい人達が周りにいる事での資産喪失である。人生で困難に全く遭遇していない人、困難に最も遭遇した人は余り幸福を感じない。逆境を中程度に経験した人の満足感が高い。これは逆境から希望を持って何か?を目指している時、この目指している時こそが幸福なのである。

⑦あとがき
人は自分に似た人からの助言が最も役に立つ。これは真実である。

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