THE GOOD LIFE     

 Robert J. Waldinger ,Marc Schulz Ph.DTHE GOOD LIFE  Robert J. Waldinger  2023年

第1章 幸せな人生の条件とは?

ハーバード成人発達研究は、1938年に開始された。研究のテーマは、「何が人を健康にするのか?」であり、被験者は268人の優秀、且つ、一般的に裕福なハーバード大学の学生とボストン都心部で暮らす最貧民な少年456人であり86年間に渡り追跡調査してきた内容である。身体の健康•心の健康•長寿との関係を調べてきた。その結果は、健康で幸せな生活を送るには、社会的成功とか運動習慣とか健康的な食生活でもなく、良い人間関係のみである。これが、86年間かけて分かった事実である。5年毎の詳細な健康のデータ、15年毎の対面調査を実施してデータを蓄積した。この章で1つのサンプルを紹介している。ヘンリーである。研究史上最も幸福な男としてヘンリーが紹介されている。1941年ヘンリーが14歳と時からインタビューは始まる。ボストンの最貧民層に属していた。父親はアルコール中毒で小さい頃から苦労をしていた。1953年にGMに就職する。1954年、ローザと結婚する。息子のロバートの病気の為、欠勤が多くなり解雇された。妻のローザも市に勤めた。1963年、GMに再就職する。ローザとの面着は2004年である。2009年ローザ死去、一月後、ヘンリー死去。娘のペギーに研究は引き継がれた。ヘンリーが生前、最も怖がったのは、ローザが先に死ぬ事であった。妻のローザとの良好な関係がヘンリーの心身共に健康な状態を作りこんでいた。この事例をもとに人間の幸福(well-being)は、心の繋がった人間関係であると結論付けていく。心の通った人間関係は、人を健康にする。逆に孤独は人を悪い健康状態に陥られせる。86年に渡る本研究でこの事実を示していく。

第2章 何故、人間関係が重要なのか?

 古代ホモサピエンスは生き延びた。その理由は社会性があった為である。人間の脳は孤独にまつわるネガティヴな感情を脅威と捉えストレスや病気を引き起こす。人間には栄養が必要で運動が必要で仲間、分かり合える仲間が必要である。多くの人が、幸せで満足のいく人生を送るのは難しいと感じている。その理由は2つあり、1つ目は「幸せに生きる事」が優先されていない事である。もう1つは脳は幸せに繋がる事柄を見分ける能力か低い為である。
 2人のハーバード大学卒の男性を事例に挙げている。ジョンとレオである。ジョンは裕福な家庭に生まれ家業を継ぐ選択肢もありながら、弁護士になる事を決めた。レオは作家になる夢はあったが、高校教師になった。ジョンは高収入で、レオはそれ程ではなかった。しかし、幸福度はジョンは低くレオは高かった。ジョンは愛に飢えていてレオは暖かい家庭に恵まれた。ジョンは離婚と愛のない結婚であり子供との関係も希薄だった。また、出世、仕事に注力した。それに比べてレオは4人の娘達との関係も良好だった。その違いは家族から愛されているかいないかである。この中で筆者は文化の影響を述べている。我々は知らず知らず自分が入っている文化に取り込まれている。深く考える事なく皆がそう思い込んでいる事を幸せに至る道と思ってしまう。出世すれば幸せになれる、金持ちになれば幸せになれると思いがちである。しかし、これは確証はない。実は間違っているのである。出世しても金持ちになっても幸せにはならない。幸せと感じるかどうかは他者との関係なしには感じないのである。自分を愛してくれる人がいる。自分が愛している人がいる。この思いが幸せを導くにである。
 人は幸せの種を見落とし易い事を「電車の中で見知らぬ人に話しかける」という実験で説明している。電車の中では見知らぬ人には話しかける事は基本しない。理由は変な人との関係を持つ事を恐れるからである。しかし、実際実施してみると、話しかけたグループは普段よりも気分が良くなったと言っている。この検証で分かる事は、我々は人間関係によるメリットを過小評価しているという事である。人との繋がりを深めるという事は我々が考えるよりも大きな影響を持つのである。
 ある調査では収入が75000ドル(日本円で1000万円程度)までは幸福度に比例するが、それ以上は余り相関がない。また、手段が目的化してしまう事も危険である。他人との比較に注力すると他人と比べて劣っていても優れていても幸福度は下がる。
 ボストンの貧民街の少年だったアランは母からの愛情をたっぷりと受ける事ができた。アランは冒険心と大志を持っていて大学にいく事を自然に感じていた。実際はに大学にいき職を得て56歳で定年している。95歳の時にアランは結婚と子供•孫に恵まれ高い幸福度であった。人間関係が人を幸せにする良い事例である。
 エピクトテスという古代ギリシャの哲学者は奴隷出身だった。エピクトテスは変えられない物を受け入れる静かな力と、変えられる物を変える勇気と、変えられる物と変えられない物を見分ける賢さを与えて欲しいと述べた。良好な人間関係は変えられのである。良い人間関係は健康•長寿等に良い影響を持つ。
 適応能力について言及している。人間は良い環境にも悪い環境にも直ぐに慣れていく。自分の意思に基づく行動により自分の幸福度を上げていく事が可能である。レオには4人の娘がいてその1人がキャサリンである。キャサリンと夫は4回の流産を経験した。決して子供だけが幸せではないと、夫婦で話し合って夫婦としての絆を深めた。そして、奇跡の子供を授かった。子供を授かった事と同時に2人は夫婦としての幸せ構築したのである。これこそが、自分の意思による行動での幸せへの道である。これを適応能力と呼んでいる。これこそが、人生を幸せにするエンジンである

第3章 紆余曲折の人生を俯瞰してみよう

10代から70代80代に至るまでの様々なライフステージでの自分の人生を振り返って俯瞰的に眺める事を勧めている。ウェスという人から見たら紆余曲折を事例として紹介している。
 ウェスはボストンの貧民街で生まれ7歳で父親は家族を捨てて出て行った。暴力を家族に振るう酷い父親であったが、いなくなって家族は経済的に困窮を極めた。しかしウェスの兄弟はウェスが困らない様にお金を稼ぎウェスが、非行に走らない様に努力した。兄はウェスにとって自慢であり目的であった。兄は親がわりであった。姉も優しくウェスの為にキャンプの費用を稼いでくれた。家族は団結があり幸せであった。しかし、ウェスは、学校を中退し働き始めた。一時期目標を見失ったが、19歳の時、朝鮮戦争に従軍し、彼の人生を大きく変えた。戦争後も軍の仕事を海外で行い自分の手で生きていく自信と能力を身に付けた。実家に戻り母と姉の為に家を買った。これは恩返しという意味でとても価値ある行動であり家族にとって象徴的な喜びである。ウェスは警察に採用され組織に溶け込んだ。40歳を過ぎてエイミーと結婚する。エイミーにはライアンと言う子供がいた。ウェスにとって結婚生活は最初不安だった。ウェスにとって父と母の結婚生活は悲惨で、ウェスもエイミーを傷つけてしまわないかが心配であった。しかし、結婚生活をするにつれて、その心配は解消された。一方、人生には想定外の出来事が起こる。良い場合も悪い場合もある。ウェスの場合はライアンの妻のリアが43歳の若さでライアンと小さな子供を残して亡くなってしまった事だ。この様な想定外もあったが、81歳のウェスにインタビューをした時、ウェスは、孤独も孤立も疎外感も感じず家族との強い絆を持てると述べている
 これが、ウェスの紆余曲折の人生である。これから我々は何を学ぶのか?幸福度は、生まれた環境でも良い大学を出る事でも良い会社に入る事でも高い収入でもない。良い人間関係である。特に家族の絆が大切で、苦しい時を共有しその苦しみを耐え次のステージに進み絆を有している事が真の幸福に繋がると考える。
 ※例えは変であるが、学校でのクラブ活動にも共通する絆である。

各世代での特徴を説明していく。
 ①青年期(12〜19歳)
とても難しい年代である。抱きしめてほしいけど、子供扱いは嫌だ。評価してほしいけど、恥ずかしい思いはさせない事。導いてほしいけど、管理しない事。自由にさせて欲しいけど、見捨てない事。内面的にはわくわくする気持ちと恐れを抱いている。人生に、対しての根本的なぎもんが湧き、不安も尽きない。外面的には素直だった子供が気難しい10代の少年少女に変貌する。この時期ほど、仲間、友達を必要とする時はない
成人期初期(20〜40歳)
青年期が「自分は何者か?」と言う問いであったとすると、成人期初期は回答の真価が問われる時期だ。内面的には将来への道がまだ定まっておらす不安と孤独になる場合もある時期である。外面的には仕事に集中して恋人との親密な関係を深める時期である。家族から独立する時期でもある。仕事と家族という2大領域で自我の確立をしていく。その両方で成功を収める人、片方だけの人、様々な様相となっていく。大人になれない人も存在して、日本では引きこもり、英国ではニート、スペインではNiNiと呼ばれ先進国のある層に生じている現象である。
中年期(41〜65歳)
外面的には安定した仕事があり日常生活は、ルーティンの繰り返しに見える。内面的には自己を確立し盤石な人生を送っている様に見える。一方、私の人生はこれで全部だろうか?と思う人がいるのも事実である。
老齢期(66歳以降)
自分にはあとどれだけの時間が残されているのか?いつまで健康でいられるか?頭が衰えてきていないか?限られた時間を誰と過ごすか?等の疑問が生じる時期である。外面的には、心身の衰えが目立つ。内面的には簡単ではなく、怒りっぽい印象があるが、目の前のものが大切になる傾向がある。死への意識と前向きな生き方のバランスが大切な時期である。

第4章 ソーシャル•フィットネス

 ソーシャルフィットネスとは、人間関係の健全度を意味する。もう少しわかり易くのべると、ソーシャルとは社会であり、フィットネスとは適応力である。社会への適応力であるが、多くの自分でない他の人との良好な関係性の維持と読みこなすことができる。この観点でスターリング•エインズリーというハーバード大学卒の男性を事例に説明している。スターリングさんは、ハーバード大学卒だか、生まれは恵まれた環境ではなかった。父は仕事はしていたが、ギャンブル依存で家庭は経済的に困窮していた。母は父に療養所に入れられてから人が変わってしまい姉のロザリーがスターリングさんの母親替わりとなった。父はその後蒸発し、スターリングさんをエインズリー夫婦がスターリングさんを養子として迎えくれた事でハーバード大学に行けたのである。養母であるハリエットがスターリングさんを愛してくれてスターリングさんは幸せな生活を送る事ができたと言う背景がある。その後、スターリングさんは就職、結婚、3人の子供を持つが、妻とも子供とも長く疎遠な状況である。退職後はトレーラーハウスで生活し唯一の楽しみな近くに住む86歳の女性と一緒にテレビを見る事になっている。このスターリングさんをこの章のメインの研究対象者として紹介している。この章での1番の言いたい事は、自分の過去を振り返り大切な人を思い出しすこと、これをソーシャルユニバースと呼んでいる。次に、その人達に自分ぱ何を求めているのか?表にする事としいる。最後にその人達と会う計画を作り良い人間関係を復活させ孤独から脱皮し他者との交流の質と頻度を上げ幸福度を上げるのである。

 人間は社会を作る事で生き延びてきた。古代、人間は大草原で肉食動物と隣り同士だった。1人になる事は自分1人で全ての危険から身を守る必要があった。1人になる事は心の中でアラームがなってある状態である。この様な状態が続くと心身共にダメージとなる。継続的な孤独は人間にとって極めて危険な状態といえる。人間関係は複雑である。1人の方が楽である事も多く1人を選択する事は容易である。しかし、この1人の状態が継続するといつの間にか不健康になっているのである。人は幸せになるには、質と頻度を考慮した人間関係の継続的維持が重要であり、これを実現するには、時間とお金を投入する価値がある。

第5章 人生への最高の投資

 人生で最高に大切な物は、お金ではなく時間である。生きるとは時間を過ごすと言う事である。人間の一生は最終的に死ぬ、この事だけが事実で他の事は明らか、言い換えると、死以外は確実ではない。多くの被験者の回答では時間の使い方を後悔している。もっと、妻と一緒に旅行すべきだった、もっと子供達と遊べは良かった等々である。この本の中で、他人への注意が大変重要であるとの表現が繰り返しなされている。しかし、この注意と言う日本語の持つニュアンスと英語のattention は少し異なる様に思える。注意とは指導的な意味も持ち、この本での約としては、好意or配慮の方が適切であると思われる。他の人に時間と好意を持つ事は相手に自分の命を与えているのと同じ意味を持つ。
 また、多くの人間は今は時間がないと思っている。また、将来いづれかは時間ができやりたい事をやれると思いがちである。この問題を解く鍵は、人間の心の特質を知る事が重要である。人間の心はその時実施している事以外の事の何かを考える性質を持っている。これを筆者は「心が彷徨っている」と表現している。心が彷徨っているとは、今の目の前の出来事ではなく、将来の事だったり、過去の事だったり、今とは異なる事に自分の脳を使っている状態を示している。この様な特徴を持つ人間の脳であるが、一方では1つの事にしか処理できない特質もある。マルチファンクションな処理は出来ず1つ1つ脳を切り替える必要があり、切り替えるには心のエネルギ、つまり、負担がかかる。この様な特質を持っていると理解する事は大切である。人間の能力は1つの事に集中している時、思考力•創造性•生産性は大きく向上する。
 他人に注意•好意を向ける事の価値を考える。被験者のレオをサンプルとして説明している。レオはハーバード大学を卒業して高校の教師になった。収入は決して多い方だはないが、人生の幸福度は高い。この理由を深掘るわけであるが、レオの家族はの注意•好意、時間の投入の仕方にその解答を見ている。妻との時間の過ごし方、子供たちとの時間の過ごし方、これらが家族を愛で結ばれた関係にしており、これが、幸せの源であると説明している
 また、スマートフォンに対してはその使用に対して4点の注意を示している。①スマフォを使う時は他者と積極的に関わる事②スマフォを使う時は自分の心の状態を確認する事③スマフォを使う際、家族等の大切な人がまたどの様感じるかを確認する事④スマフォを使わない時間を作る事である。
 スマフォに時間を使い過ぎるのは決して危険であり生身の人間との触れ合いを大切にした方が良い。マインドフルネスは、「今、ここ」に力点を置いている。これは、将来の事や過去の事を思うのではなく、今、目の前にある事実にもっと心を集中する事で心の彷徨いを抑えると共に、今目の前にいる人間に集中する事を推奨している。これは、相手への注意•好意であり、これこそが、人生で最高の投資、自分の時間、言い換えると、自分の人生•命を投資する事であると筆者は述べている。最後に、目の前の愛する大切な人に対して以下の4つの内容を奨めている。①今まで以上に注意•好意を向ける事②1日の過ごし方を変える事。スマフォを持たず大切な人との会話を楽しむ事③相手への注意•好奇心を忘れない事である。相手への注意•好奇心は伝搬し相手からも注意•好奇心が与えられる結果となる。これはの時間こそが、人生で最高の投資であり幸福度を向上される方策である。

第6章 問題から目を背けず立ち向かう

 人生で困難な時期にどの様な対応をしたかで、その後の人生は大きな影響を受ける。問題を真正面から受け止めず目を向けずに問題が更に大きく手に負えなくなる場合がある。また、ある方策に取り憑かれ他のより効率的な方策を考えない事により問題を大きくしてしまう事がある。これらの心の課題に対してどの様に論理的に対応するかをクリアにした考えるなのが、WISREモデルである。WISERとは、Watch観察、Interpret解釈、Sellect選択、Engage実行、Reflect実行の5段階からなる第1ステップのWatch であるが、何か感情的な事情が発生した時、自分の感情を抑え「一時停止ボタン」を押すのである。これは人間は感情的な場面に遭遇すると即座に対応してしまい最適な行動を選択できない場合が多い為に、何か感情を制御しづらい事象が発生した場合、一呼吸おく事で常に冷静さを失わない様に自分の心をコントロールする事の大切さを述べている。この段階では冷静に自分を見つめ、何故自分はこの様な感情が発生するのかを好奇心を自分自身に向けるのである。この感情は人生の重要目標、不安の種、大切な人間関係などが関わっているかも知れない。その原因を知る事が、大切である。拙速に結論を出さない事、思い違いをしない事が重要である。第3には選択である。複数ある方策から最も良いバランスの取れた案を採用する。そして、それを実行する。最後に振り返り、この選択は自分にとって正しかったのか?を振り返り、何を学んだのか?何かより良い方策が存在したのか?これを自問自答するのである。人間関係での行き詰まりはよく生じる。「人はいつも同じ問題で苦しむ」と言われる。思考パターンがその人固有である事が多く、同じ問題で苦しむのである。人間にはこの様な思考パターンがあると知っておく事は、行き詰まりの時大切で、そんな時、物事が上手く行かない時に支えてくれる人間関係を作っておく事は非常時に大変重要である。予期せぬ出来事が生じた時、冷静に一時停止して色々な方策を考え、頼りになる人との会話を通じ問題解決を図っていく事が幸せになる道である。

第7章 パートナーとのグッドライフ

          better halt = 2人で1つになる片割れ
 パートナーを表現する場合、欧米ではよくこの様な表現をする。パートナーとはもう1つの自分であり、2つが1つになって初めて完成するという考え方である。パートナーと長い生活をしても、人は誰しも自分が傷付く事を恐れている。その結果、自分の心を誰にも開く事なく生きる場合がある。パートナーに対しても、この様な姿勢でいる事がある。表面上は喧嘩もなく非常に良好な関係に見えるパートナー関係でもこの様な状態は存在する。良いパートナー関係とは、困った時に何でも相談でき話し合える関係である事である。親密さとは心を開く事である。 intimacy 親密さの語源は、intimare 知らせるである。親密さを表す表現として、手を握るという行為がある。手を握り相手の温かみを自分が直接感じる事は安心感と言う観点で大きな影響を持つ。特に医療での効果は大きく軽い麻酔薬と同様に扱えるレベルである。男性の晩年の健康は50歳時点での結婚生活の幸福度の影響が大きいと判明している。パートナーとの親密度を測る手段として有効であるのが、感情である。自分が何故、この様な気持ちを持つのか?を見つめる事は非常に有効である。絆が安定し良好な関係が長続きする理由は、共感と愛情である共感している事実よりも共感しようとする姿勢が大切である。これをダンスの練習を用いてわかり易く説明している。何度も何度も練習して初めてダンスのステップは上手にできる様になる。上手く一緒にステップが踏めない事よりも、共に協力して一段高いレベルに至れるか?そのプロセスが重要である。問題に対して、どの様に対処するかの姿勢こそが絆のあるパートナーになれるかの分岐点である。異なる2人は意見の不一致が時として生じる。その様な時、wiserモデルを用いて冷静に分析する価値がある。また、人間関係はほっておいても良好さが維持される事はない。親密さは生き物である。注意と好気心を発揮して相手と接する事である。横軸を年齢に取り、縦軸に状態をとり人生の満足度をグラフ化するとパートナーとの親密度が大きく関与している事が分かる。また、子供が生まれると幸福度は低下する。末の子供が巣立つ後、夫婦の幸福度は向上する。子育てはこの様に精神的に負担となっている事が分かる。2人で一緒にストレスに対処できるカップルは健康や幸福、人間関係における充実感を受け取る事ができる。最後にパートナーとの関係を改善する3つの方法を示している。1つ目は、パートナーが優しくしてくれている事に気づく事。2つ目は、いつもと違うルーティーンを行い新しい視点で相手を理解し相手の素晴らしさに気付く事。3つ目は、wiserモデルを実践する事。強い感情が込み上げてきたら、一呼吸置いて観察と解釈を行い、その理由を深く考える事。具体的なテクニックとして3つあり、第1は「反復リスニング」である。これによりパートナーの意図を正しく理解しているかを確認する。第2は相手がどうしてその様な感情になったのか、その理由を理解していると伝える。最後にその会話から少し距離を置く。これにより相手の感情が一時的な感情である場合にすぎない事に気付く事がある。パートナーも自分と同様、葛藤の中にいて自分と戦っている事を思いやる配慮が大切である。

第8章 家族とのグッドライフ

 様々な人間関係の中でも家族は特別である。家族の特徴は私達のwell-beingに甚大な影響を与える。家族には良いときも悪い時もあり、その影響は家族全員に大きな影響を与えてえる。ニール•マッカシーの家族を例に家族の絆を説明している。ニールは、貧民街の出身で両親は、アイルランド系移民だった。14歳の頃のニールの家庭は経済的には困難な状態であったが、家族は団結して幸せであった。しかし、その後、大きな変化がおとずれる。母メアリーのアルコール依存である。これにより家族は混乱を極めた。家庭は暴力と怪我、怒鳴り合い等の状態に陥った。しかし、ニールの父は常にニールに注意を払った。この父の存在は極めて大きい。ニールは19歳で家を出た。軍隊に入り朝鮮戦争に従軍し除隊した。その後、ゲイルと出会い恋に落ち結婚した。4人の子供に恵まれ長男、長女リンダ、次男ティム、次女ルーシーである。ニールにとって悩みはルーシーであった。ルーシーは子供の頃はとても優秀でNASAを目指すほどの優れた少女だった。しかし、学校に馴染めずいじめにあった。不登校になり高校卒業後も問題が多かった。飲酒、就職するが欠勤による解雇、等々である。ルーシーにとってティムはよい話し相手だった。ニールはルーシーに対してどの様に接するのが良いのか?分からなかったが、決して問題に背を向けなかった。また、ニールは妻のゲイルと良好な人間関係を築いていた。ゲイルがパーキンソン病を患ってからニールは働き方を変えゲイルの為に尽くした。ニールの家族は常に問題に対して決して背を向けず試練に家族全員で向き合っている、これが家族から得られる幸福度である。リンダは父であるニールを尊敬しており多くの事を父から学んだと述べている。
 ニールの人生から家族の在り方を我々は学ぶ事ができる。家族で大切な事は、問題に対して決して背を向けず試練に立ち向かい一致団結する事である。この事例を用いて家族と言う人間にとってとても大きな影響を持つ組織に対して我々に助言を行っている。幼少期の逆境は乗り越える事ができる。人間はその生まれを変える事はできない。悪い家庭に生まれ育った人は悪いループから逃れる事はできないと絶望を持つ事がある。しかし、超えらた場合が多々ある。それは少なくとも1人の大人がケアしてくれた場合である。また、大人になるにつれ感情のコントロールが上手くなる。幼少期の逆境は越えられない物ではない。また、問題に背を向けない事の捉え方にも注意が必要である。問題に背を向けない事と問題の解決は必ずしも同一ではない。解決はできなくても家族が一致団結して問題に対処し続ける姿勢こそが重要である。人生での軌道修正する4つの人生のアドバイスを示している。
 1.ネガティヴな感情から目を背けずしっかりと注意する事。
 2.ポジティブな経験が訪れるた際は気付く事。
 3.他人の良い行動をキャッチする様努力する事。
 4.人は予想外の行動をすると言う考えを常に持つ事。
これらの視点で家族の問題が生じた際に対処すると効果的であると述べている。
また、家族と強い絆を作る為に3つのルールを述べている。
 1.自分と向き合う事。相手が変わってくれたらいいのにと思っている自分はいないだろうか?ありのままの相手を受け入れ相手の立場になって考える事は絆を深めるのに大いに役に立つ。   
 2.ルーティーンを大切にする事である。特に家族での食事は大切な会話の場である。家族での食事を大切にする事。
 3.家族の1人1人が大切な宝物のような価値を持っている事を思い出す事である。
    家族全員が1人1人唯一無二の存在である。その理解が大切である。

第9章 職場でのグッドライフ

 ハーバード大学卒のエリートとボストン貧民街出身で職種、収入の差はあるが、仕事での幸福度や充実感は相関がない。ハーバード大学卒でも仕事に不満を持っている人は多く存在する。貧民街出身者で仕事に満足している人も一定数存在する。この理由は、仕事にかける時間による家族への影響と職場での人間関係である。また、職場でのストレスを家庭に持ち込まない様にする事も大切である。自分がストレスを家庭に持ちこむ場合は、頭を切り替えパートナーに注意を向ける様に努力する。また、パートナーがストレスを持ち込む場合は、一歩引いてパートナーの身になって関心を向ける。一呼吸おき「今日はどんな日だった?」と、さりげなく尋ねて見る。職場での幸福度は人間関係による所が大きい。職場に親友がいる場合、ストレスが低減し幸福度は向上する。引退後、多くの人が口にするのは職場での仲間と会えない事である。職場は仕事だけでなく人との繋がりが幸福度に大きく影響する。高齢になった時、後悔するのは仕事に没頭する余り家族との過ごす時間がなくなってしまった事と述べる人が多い。今職場での人間関係で気にすべきは以下の観点である。
 職場で一緒にいたい人は誰か?
 自分との差から学ぶ事ができる人は誰か?
 職場で対立している人は誰か?何故か?
 職場でもっとあって欲しい人間関係はどの様なものか?
 職場の仲間を本当に理解しているか?
仕事で幸福度が高い人は、どの様な職種であれ仕事に満足しており職場の仲間との関係が良好で仕事と家庭のワークライフバランスが取れていた人である。

第10章 友達とグッドライフ

 友達は人生でどれほど大切なのか?友達は人間の健康、幸福度に大きな影響を持つ。だが、軽視され放置される事が多い。友達の存在は人を健康にする。この事実をボブとジニファー、マークとジョーンの2つのカップルを例に説明している。年下のマーク夫婦が帝王切開で出産した際、子育ての先輩であるボブとジェニファーは親身になって助けた。この事で2つのカップルはお互いに助け合う友達になれた。退職後は仕事での人間関係がなくなり孤独になりやすい。何歳になっても友人を自宅に招いたりまね借りたり関係を発展させる事に大きな意義がある。友達とのメンテナンスについて、
 ①友達に耳を傾ける事
 (話を聞いて貰う事で相手が自分を理解して気遣い見守ってくれているという感覚が得られる)
 ②仲違いした友人との関係について考える事
 (メールをする、昼食をご馳走様する等々」
 ③友人とのルーティーンを見直す事
 (頻繁に会う友人とはパターン化しやすいので、新しい工夫を加える) 
の3つが必要である。孤独から解放されるには友人が必要だが、何歳になっても新たな友人を作る事はできる。アンドゥリューは定年後の67にて実現した。諦めてはいけない。

謝辞

 「人間関係こそが、人生を有意義にし、素晴らしいものにしてくれる」これがこの本の一貫したコンセプトである。この本は著者の2人出てきたものではない。長い年限と多くの情熱的であるが、冷静な賢い人達の絶え間ない献身的な探究心から生まれ一冊であり人類史上に残すべき一冊であると確信する。ロバートとマークに心から感謝する。

コメント