- 目次
- 序文
- 第1部 投資戦略
- 第2部 投資選択について
- 第3部 投資パフォーマンスについて
- 第4部 ファンド運用について
- 第5部 基本精神
- 序文
- 第1部 投資戦略
- 第1章 長期戦略とは ~チャンス氏の庭造り
- 第2章 リターンの性質 「オッカムのカミソリ」
- 第3章 資産配分問題 パフォーマンス特性のなぞ
- 第4章 単純さのメリット あるべきところに行く着くために
- 第2部 投資選択について
- 第5章 インデックス運用について
- 第6章 株式の運用スタイル 三目並べ
- 第7章 債券投資 忘却にいたる苦行
- 第8章 グローバル投資 ダイヤモンドの山
- 第9章 優れた投信の選択 聖杯を求めて
- 第3部 投資パフォーマンスについて
- 第10章 平均への回帰 ニュートンの復讐
- 第11章 相対パフォーマンス主義 幸せと不幸せの違い
- 第12章 資産規模 成功は失敗の基
- 第13章 税金問題 複眼のメリット
- 第14章 時間について 第4の要素-マジックか横暴か
- 第4部 ファンド運用について
- 第15章 基本原則 重要な原則は曲げてはならない
- 第16章 マーケティングについて メッセージは手段である
- 第17章 テクノロジーについて 何のために
- 第18章 ファンドの取締役 2人の主人に仕える
- 第19章 ミューテュアルファンドの組織構造 組織が戦略を規定する
- 第5部 基本精神
- 第20章 起業家精神 創造の喜び
- 第21章 リータシップについて 目的意識
- 第22章 人間について 顧客と乗組員
- 終わりに
序文
この本を執筆する目的は2つ。
1つは、読者が投資家として役に立つ事、もう1つはミューチュアルファンド業界が変わっていく道を示す事である。わかりやすく説明するので偏見と先入観を捨てて常識をもってとらえて欲しい。この本は以下の構成である。第1部で投資戦略を説明するが、鍵は長期戦略であり、その鍵は常識と単純さである。第2部は投資選択についてであり、株・債券等の組み合わせによる常識が勝利を呼ぶのである。第3部は投資のパフォーマンスである。過去がどうであろうが、将来的には平均に回帰するという事を説明する。第4部のファンドの運用についてであり、投資家の資産を運用させて頂いているという精神ではなく、販売に重きをおいた状態であるこの業界を再構築したいと思っている。第5は基本精神についてで、起業家精神とリーダシップについて考えを述べていく。ミューチュアルファンドでは投資家がとても搾取されている。この状態を打破する為に投資家は行動すべきである。これは精神が試されているのでありミューチュアルファンドによる専制政治を闘争してでも倒す必要がある。
第1部 投資戦略
以下の構成から成る。
- 第1章 長期戦略とは
- 第2部 リターンの性質
- 第3部 資産配分問題
- 第4部 単純さのメリット
第1章 長期戦略とは ~チャンス氏の庭造り
チャンス氏という庭作りの職人を登場させている。チャンス氏は富豪の豪邸の庭作りに専念してきた人物で、「季節は巡る。春が過ぎ夏が来る。秋が来て冬になる。しかし根が切られない限りすべてが回っていく。」この自然観が大切で株の世界も同じで夏もあれば冬もある。将来に対して不安を覚える事なく長期投資する事が重要であると説明している。庭の成長と市場・株の成長をだぶらせ長期的視線でじっくり待つ事の大切さを表現している。株のリターンとリスク、債券のリターンとリスク、各々の特徴をとらえ長期投資家としてじっくり待ち、種を蒔く、これの庭作りと共通した姿勢が投資運営においては望まれる。短期投資の高頻度な売買は最終的に投資家の利益になる可能性は低くマスコミに踊らされてはいけない。投資を成功させるには以下のルールを守る事。
①まず投資する事 ②時間は味方 ③衝動は敵 ④簡単な計算 ⑤単純である ⑥完走すべし
第2章 リターンの性質 「オッカムのカミソリ」
この章では株・債券のリターンを説明している。株はどの様に動くのかは、企業の成長を表すファンダメンタルリターンと市場から得られる株のリターンはほぼ一致する。 株のリターンは
①初期投資時の配当利回り②その後の利益成長率③投資期間内の株価収益率の変化
で表す事ができるという仮説を立てているもう少しわかりやすく述べると、投資した企業から得られる配当率とファンダメンタルな成長率と投機的な側面である1ドルの利益に対して何倍の株価をつけるか?という事を意味する株価収益率の3つのパラメータを用いれば、株価のリターンを算出できるという簡単な仮説である。株式が低調であった1970年代と黄金時代と呼ばれる1980年代をそれぞれ上記3つのパラメータで解析するとうまく説明できるとしている。この仮説を用いて将来を予測しているが大恐慌の時代と第2次世界大戦の混乱時を除き予測できたと述べている。しかし1990年からの急激な株式市場の進展は予想を上回っている。企業収益が急激に上昇した事、これに合わせて投機的な動きが活発した事が挙げられる。バブルを予測する人も存在している。
債券の予想は期初の利回りがその後10年間の債券リターンを予測する上で最も重要な変数として残り相関係数0.93という非常に高い数値になる。
第3章 資産配分問題 パフォーマンス特性のなぞ
資産は株・債券・現金の3つにバランスよくポートフォリオする事が大切である。そして自分の年齢にあったバランスを考慮する必要があり、若い時は株/債券を100:0 or 80:20にする。年をとってからは50:50にて運用する事が推奨される。また、リバランスも資産のリスク低減には効果があり、年をとっていなる場合なら、年に一度、株と債券のバランスを50:50にすれのであるあるが、株が強気相場である場合は、株を売り債券を買って次に来る弱気相場に備える事で、弱気相場なら債券を売って安い株を買っておく、このポートフォリオの修正が強気・弱気の双方の相場に効果的な影響を与える。また、全体として運用コストを低くしておくことは大前提であるので投資する案件を事前によく調べ低コストである事を確認しておくことが大切である。
第4章 単純さのメリット あるべきところに行く着くために
投資をする上では単純さを大切にしなくてはならない。単純さとは、「常識・倹約・現実的期待・忍耐と根気強さという美徳」に頼る事である。投資において最も単純なアプローチは、株と債券を65:35といった様に分配したインデクスファンドを採用する事である。この際以下の5項目は必須アイテムである。
①市場全体を保有する ②優秀なマネジャー選びに労力を費やさない ③タイミングを図らない
④組み換えは最小限にする ⑤低コストはファンドを選定する
アクティブ投資がすきな投資家の感情は以下の通り。
①この春が永遠に続いて欲しい ②私は平均以上 ③このゲームは高くでも楽しい
④この話は上手くできている ⑤簡単にうまくいく
一般の投資家がうまくいく成功の鍵は以下の7つ。
①低コストファンドを選択(1%は大きい) ②専門家のアドバイスは高くつく(自分で考える)
③過去のパフォーマンスは過去のもの ④ファンド選ぶ時は一貫性に基づく実績を重視する事
⑤マネジャーは平凡で可 ⑤資産規模を重視(大きくなり過ぎたら成長は鈍化する)
⑥多くても5個程度のファンド数に留める ⑦一度決めたフォートフォリオは守る事
第2部 投資選択について
以下の構成から成る。
- 第5章 インデックス運用について
- 第6章 株式の運用スタイル
- 第7章 債券投資
- 第8章 グローバル投資
- 第9章 優れた投資の選択
第5章 インデックス運用について
アクティブファンドに比べ低コストなインデクスファンドは競争がある。理由は、分散されたポートフォリオであり低いコストである。S&P500のリターンを上回ったアクティブファンドは1998年までの間では1965年からの3年間と1973年からの2年間と1991年からの2年間の3回は、多くのアクティブファンドがS&P500を指標としたインデクスファンドよりも高いリターンを出している。これらの時期は投機的な攻撃な運用が多くなされていた特徴があり、しかし、その後には投機バブルが崩壊し、S&P500が圧倒的に強い時期に至っている。1970,80年代の大型企業とは、GE・IBM・GMであり1990年代になってからはマイクロソフト・GE・コカ・コーラ・エクソン・メルク等の名前が挙がっている。各時代を象徴するような企業であり時価総額平均荷重での企業選定の意味が伝わってくる印象である。アクティブ投資とインデックス投資の違いは運用コストであることは明確であるが、それを正規分布で示している。コストを考慮した場合と考慮しない場合で分布で比較している。また、回転率の高さによる税金の影響も重要であると説明されている。また、債券市場でもインデクスファンドは効果的であると述べている。
第6章 株式の運用スタイル 三目並べ
3×3のマトリクスを用いてファンドの特徴を説明している。横軸は、ファンドでパラメータとしてバリュー型・ブレンド型・グロース型のつであり、縦軸は大型・中型・小型の3つであり、各ファンドを、この様なマトリクスに入れる事で、各々の特徴を更に見やすくしている事が特徴である。マトリックスに入れる比較すべき数値としては、ファンド数・年平均リターン・リスク・リスクリターンレシオ・経費率(最大・最小)・インデクスファンドに対するリターンの優位性・同リスクの優位性・インデクスファンドとアクティブファンドのリスク調整後のリターン等々を比較している。結論として、何が言いたいのかと言うと、マトリックスを用いて各セクションごとでのファンドの特徴を述べながら最終的には、コストの安いインデクスファンドがコストの高いアクティブファンドの方が有効である事を示している。
大型株ブレンドファンドについて、集合を4つの水準に分けて傾向を解析している。4つに分けたファンドとリターン・コスト・を述べてから、5年間のネットリターン+経費率=グロスリターンという等式を4つに分けたファンドで検証して、結論としてコストの重要性を説いている。
第7章 債券投資 忘却にいたる苦行
株が上げ相場が続くと債券の資産額が減少してします。1986年に2600憶ドルの資産を有し株式ファンドの1600憶ドルを60%も上回っていあたが、82年から始まった株の2度の上げ相場で1998年には債券は1兆ドルになったもの、株式ファンドは2.4兆円となり見劣りする状況になった。債券には長期地方債・短期国債・中期国債・中期一般債権(主として投資適格社債)がある。また、債券を評価する尺度として、リターン・デュレーション・ボラティリティ・ポートフォリオクオリティーの3つがある。長期地方債・短期国債・中期国債は、年間経費率(コスト)と年平均リターンに強い相関がある。中期一般債権である中期社債ファンドとコストは余り相関はないが、緩やかな相関があると言える。これらの多くの債券ファンドはコストが高いものが多く、投資家が低コストなファンドを見つける事はできないわけではないが、時間と労力を要する。その確率は20件に1件程度である。コストの高い債券ファンドを一掃し債券業界を立て直したい。
第8章 グローバル投資 ダイヤモンドの山
基本的にジョンCボーグル氏はグローバル投資に対しては否定的である。グローバル投資を積極的に推進している人たちはUS48%、他52%を理想的なポートフォリオと呼んでいるが懐疑的である。その理由の代表的な部分が通貨(為替)である。ドルが強い時もあれば、弱い時もある。全体としては、これはリスク、バラつきの要因となっている。1978-1988年の10年間と1988-1998年の10年間ではUSと他の最適比率が変化している。先の10年では50:50の比率が最適であったが、後の10年では80:20が最適となっている。リターンとしては18%が16%に少し変化しているが、大きな変化はないとの認識である。ボーグル氏はグローバル投資は20%を上限にするとよいと述べている。グローバルと言った時の対象国であるが、EU諸国とアジア(特に日本)である。日本は90年初頭までは日の出の勢いであったが、その後は縮小が激しい。他のアジア諸国は通貨の下落等の影響が大きすぎる。経済が順調な世界のリーダであるUSを母国とする場合、敢えて、海外への投資をする必然性は低く、USの企業そのものが売り上げを海外で稼ぐ企業も多く通貨リスクを超えて投資する事に対しては否定的な印象である。
第9章 優れた投信の選択 聖杯を求めて
この章では25年前、1970年半ばにインデックスファンドが誕生し広がりを見せているが、どの様に優れたインデックスファンドを選択するのが良いのかを検討している。切り口は3つあり、大学教授による研究・投資アドバイザーに頼る場合・ファンドオブファンドである。はじめの大学教授の実例は、スタンフォード大学のシャープ博士の研究であり、次は南カリフォルニア大学のカーハート教授、最後にゲッツマンとイボットソンの共同研究である。シャープの研究は特定の100のファンドを研究対象としており、この選び方に問題(生存バイアスがかかっている)があると指摘していて、且つ、販売コストが未考慮である事を指摘しながら、平均に対してこの100のファンドのリターンは0.64%の差であり、大きな差分がなかった事を示している。次のカーハートの研究ではファンド数は1892件である消滅したファンドも含まれており生存者バイアスは問題なく、結果としては、アクティブファンドはコストが高くリターンはインデックスファンドに対して良い状態ではなく、一番上の4分の1に入る確率は17%であると示し高いコストがある限り優良ファンドにはなれないと説明している。ゲッツマンとイボットソンの共同研究では、アクティブファンド高い手数料によって平均をアンダーパフォームし続ける可能性が高いと示している。これらの研究からは、常識として、手数料が高いアクティブファンドに勝ち目はなく、低コストなインデックスファンドの選択が良いと説明している。次は投資アドバイザーを頼る場合であるが、これも高額なアドバイザー手数料の為に良いパフォーマンスを得られない事を示している。最後にファンドオブファンドもそのコストが4%にも達する事が想定され決して勝者のゲームになりえないと説明している。締めとして、投資の聖杯は低コストなインデックスファンドであると述べている。
第3部 投資パフォーマンスについて
第10章 平均への回帰 ニュートンの復讐
すべての投資信託は10年程度の期間にて平均に収斂していくというのが、平均への回帰であるとボーグル氏は主張する。ニュートンの万有引力の法則の金融業界版である。ミューチュアルファンドのリターン成績の良いものも次の10年では平均に収斂する。また、成績の悪いファンドも平均に収斂する。ただし、コストが高いファンドは悪い状態を維持する。これは複利の負の効果である。大型・小型の分類でも同様である。グロース(成長性の高い企業の株)とバリュー(割安の株)も同様で平均に収斂する。値がさ株と低位株も同様である。アメリカ株と国際株も同様である。ただし、平均は70年代80年代90年代と徐々に上昇している。これらの事実からボーグル氏は、広く分散されファンドを株と債券を年齢に応じ比率を変えて運用する事を勧めている。特に重要な事は退職後の安定な生活であり、低コスト・税金考慮を重視し単純さと常識をもって判断する事が大切であると述べている。ここで言う、単純さとは自分にとってのわかりやすさであり、暴落時にも冷静でい続けられる精神の根本となるようなコンセプトとしている思う。
第11章 相対パフォーマンス主義 幸せと不幸せの違い
ファンドマネージャーは、短期目線での成果を常に求められている。4半期ごとの運用成績をSP500と比較させ、以上なら幸せ、以下なら不幸せという表現になっている。この短期目線は投資家にとっても何も得るものはない、長期目線での評価の方が重要であるからである。四半期毎の成果の連続した結果が長期目線でのゴールには繋がらない。これはコストの影響である。また、最近アクティブファンドでああるが、インデクスファンドの構成に大変近いファンドも多くみられる。これらは手数料は高いが、運用内容はほぼSP500と同様である。これらのファンドも最終的には決してインデクスファンドにはコスト理由で敗者のゲームである。
第12章 資産規模 成功は失敗の基
ミューチュアルファンドは規模が大きくなるとリターンが悪くなる。また、USの企業の株の25%はこのミューチュアルファンドに支配されている状況になっている。規模が大きくなったミューチュアルファンドはUS経済を支配しながらもリターンを悪くしている。これが現状である。なぜ、規模が大きくなったのにそのままの姿を保っているのか?それは、運用会社にとっての利益は規模に比例するからである。投資家にとっては、リターンが小さくなり非効率になっているが、運世会社にとってはメリットが大である為、この状況が継続されている。規模が大きくなると効率が悪化する理由は、対象対象が限定でされる為である。ファンドの資産の3%を超える銘柄を作りたくない事、ある企業の株を10%以上を保有したくない事、の2つであると述べている。ファンドの規模が大きくなると対象となるのは、どうしても大企業のみとなるのである。第2は、この様な状態でもファンドマネージャは高回転での取引を求められる。対象が大企業に限定されながらも頻繁な取引をし続ける事はリターンの割に取引コストが上昇してしまう結果となり良いリターンを得る事がきでなくなる。第3の理由は、規模が大きくなると運用会社の組織的な支配力が強くなり、会社のルールが多くなりファンドマネージャのオリジナルがアイデアが創出できにくくなる点である。これの状況を踏まえボーグル氏は以下の提案を行っている。
提案① 運用目標を変えてはいけない。
これを実現するためには、高頻度な売買を止めざるを得ないからである。
提案② 追加募集を締め切るべし
ファンドマネージャ、及び、運用会社は規模に応じて手数料が得られるが投資家にはマイナスでしかない。この状況を止める為には応募を中止すべきである。
提案③ 新しいファンドマネージャを加える事
流入した資産を基のファンドに加えるのではなく新しいファンドを作り、新しいファンドマネージャーに運用させるのである。
提案④ 運用フィーを下げインセンティブフィーを上げる
リターンに応じた成果をファンドマネージャーに報酬として上げる。これが公平である。
提案⑤ 低コスト・低回転を保証するファンドを提供すべき
インデクスファンドに長期投資して投資家へのリターンを大きくし運用会社への利益を小さくすべきである。
最期に益々大きくなるミューチュアルファンドは今後US株の40%を支配するであろう。流動性が問題となりコスト・税金の問題も深刻になる。至急改善が必要である。
第13章 税金問題 複眼のメリット
資産の売買には税金がかかる。特にUSでは、短期売買では40%、長期売買では20%と税率が変化する。この思い税金の為に、高回転で株の売買を行うミューテュアルファンドは税金を投資家に負担を求めている。高回転での売買で運用会社は高額な手数料を貰う事ができ、更に高額な税金も支払う事で投資家のリターンは低コストインデックスに比べ、27%ものダメージを受けている。(P.289)これはスタンフォード大学ジョエル•ディクソン、ジョン・ショーブンも同様の考察をしている。ここで、ボーグル氏は更に良い提案として節税型ファンドを示している。
•基本はインデックス投資である。
•低配当利回り銘柄を保有
•含み益確定する際は同時に値下がりしている銘柄を売却して補填する
•損失して売買した銘柄は30日後に買戻す
•5年以内の解約はペナルティ
これらの特徴により節税効果を出しつつ、ペナルティにより長期投資を導いていく。また、異なる提案もしている。
•50の大規模銘柄を保有
•解約時は、株券の配布とする
税金対策として退職プランである。これは無税なので配当金期待の債券に無税枠を使い、インカム期待の株は課税口座に入れて、長期に保有し値上がり益は無期限に繰越すというのが、ボーグル氏の提案である。
第14章 時間について 第4の要素-マジックか横暴か
投資を考えるに4つの軸が存在する。リターン、リスク、コスト、時間である。リターンが重要であるのは言うまで無い。リスクも同様であり、リターンとリスクの代表的な尺度がシャープ•レシオである。この章でボーグル氏は、国際分散の意義をこう述べている。🇺🇸以外に投資して本当にリスクを分散していると言えるのか?である。株、債券共にリスクを分散していると言えるのか?この疑問を呈している。第3の要素はコストである。販売手数料、高い回転数で発生する手数料、それと税金。これで投資家の利益は大きく毀損される。特にUSの短期投資での課税は40%にもなり、投資家の利益を奪っている状態である。第4は時間である。複利で効果がでるが、コストが高い場合は、複利で損失が生じる。この横暴とも言える複利の逆効果を良く理解する必要がある。
第4部 ファンド運用について
第15章 基本原則 重要な原則は曲げてはならない
ミューテュアルファンドの本来の目的は、投資家の資産を預り長期的視点で増やす事である。この受託者精神を失ってはなりない。しかし、今日USでは、全く逆の動きをしている。運用会社、ファンドマネージャーが自己の利益の為に、短期投資に走り、高い回転率で株の売買を繰り返し投資家の資産を食い潰している。あるファンドの最高責任者は自己の資産は低コストなインデックス投資で長期目線で増やし、投資家から集めた資産は短期投資で高回転で運用して自己の利益を求めている。また、ファンドの規模について述べると、規模が大きくなると投資家のメリットは削減されてしまうが、運用会社は規模に、応じて手数料が増加するので、メリットが大である。また、手数料自体も1981年に対して1997年比で、0.97%から1.55%に上げて膨大な利潤を上げている。これらは、全て受託者精神とは全く逆の考え方である。投資家は自己の知識を増やし騙されない工夫が必要である。運用会社も情報開示をより進める必要がある。情報が記載されていても、とてもわかりにくい文章が、一文あるのみである事が多い。
第16章 マーケティングについて メッセージは手段である
ミューテュアルファンドで大切な事は、販売による売り上げアップか?投資家の資産アップか?この問いに対して、大きなズレが生じている。ミューテュアルファンドができたばかりの1930年頃は、投資家の資産アップが目的で、長期保有が基本であった。しかし!最近は、投機的な短期売買が多く、売り方も人の気を引く様な商売スタイルとなっている。特に1980年SECは、投資家の資産を使っての販売活動を、禁じていた。しかし、1980年に解禁されてからは、投資家の資産を用いての販売が多く見られる様になった。ノーロードを全面で謳いながら、実質的に他の費目で手数料をとても見えにくくして投資家の資産を消ている。現在のミューテュアルは、賭博のカジノに似ている。胴元の取り分が多く、最終的には投資家の利益はなかり削減されている状態である。新しい名称をファンドに付け商品をばら撒いていった。代表的な商品は3つあり。国際プラス•ファンド、短期グローバルファンド、変動利率付きモーゲージファンドである。どれも一時的な流行の後、資産は減少し消滅した。ミューテュアルファンドは、一般投資家の資産を増やす事を目的とした受託者責任が本来の位置付けてある。運用会社が、販売と受託者責任を両方ともに注力する事はできない。この矛盾をクリアする事はない。
第17章 テクノロジーについて 何のために
80年代から進展したパーソナルコンピュータと90年代からのインターネットによって株の取引は、情報量の増加と共に、その取引量は飛躍的に大きくなった。金融派生商品が多く作られ、リアルタイムで更新されるデータはほぼ、無限大になった。重回帰分析に代表される非常に複利でわかりにくい内容になった。これらの変化は、運用会社にとっての利益を爆増される結果となっただげで、投資家の利益には決して繋がっていない。ノーロードと謳いながら、同程度の手数料を複雑なシステムの何処かに入れ込んで投資家の負担としている。また、投資回転数も多くなり、これも投資家の資産を食い潰す結果となっている。コンピュータは情報技術としてはらA+,知識としてはC,知恵としてはDorEと評価している。
第18章 ファンドの取締役 2人の主人に仕える
この章では、ファンドの取締役についての役割、責任について述べている。ファンドの取締役は投資家から預けられた資金を投資家の資産を増やす事わ受託者精神に基づき判断すべきである事を繰り返し主張している。ファンドの取締役は運用会社が任命した人材で投資家の資産の増加ではなく運用会社の資産増に注力しているとしている。高い手数料、高い回転率等々、投資家のメリットにならない諸策を採用している。USには1940年資金会社法という法律まで作ってあり、その初文に「株主第一主義」が謳われている。ファンドの取締役は、2人の主人、即ち、投資家•運用会社に仕えている。法律の精神に則り、投資家に仕えるべきであるが、殆どの取締役は運用会社に仕えている。この現実を変えなくては金融業界に未来はない。
第19章 ミューテュアルファンドの組織構造 組織が戦略を規定する
ミューテュアルファンドには2つの種類がある。1つはバンガードが採用しているファンドの株主がファンドを所有するタイプ。もう1つが金融機関が運用会社を所有しファンドを運営して、そのファンドに投資家が出資するタイプ。この2つのタイプのミューテュアルファンドは、根本的な違いがある。ファンドの株主がファンドを所有するタイプでは、投資家が資産を増やす事を目的として資産を運用する。基本は長期•分際•低コストで、インデックス運用を主として採用していく。これに対して、金融機関が所有するタイプでは、目的は金融機関が利益を出す事である。様々なコスト(手数料、販売促進費等々)をかけ、商品としてのファンドを一般投資家に提供して自己の利益も含めて企業活動をするのである。ミューテュアルファンドが発足した1920年代は、投資家運用が多かったが、特に1980代以降は金融機関によるミューテュアルファンドが主流になっている。同じミューテュアルファンドという名称であるが、組織の違いが活動の目指す所を全く異なる結果にしている。金融機関によるミューテュアルファンドはコストが高く投資気に取ってはリターンが低く退職後の生活費にするには不足が生じかねない。ボーグル氏は人生をかけてこの問題に取り組んだと言える。
第5部 基本精神
第20章 起業家精神 創造の喜び
この章では投資家への受託者精神を貫いているファンドの会社であるバンガード社がどの様に設立されたかを起業家精神というキーワードで説明している。ボーグル氏にとって起業家精神の最も尊敬できる実例はウェリントンを創設したモーガン氏である。モーガン氏は投資家にとって長期分散低コストなポートフォリオが重要だとると認識して設立したのが、ウェリントンである。ボーグル氏はこの会社に大学卒業と同時に入社しモーガン氏の片腕となり35歳でCEOに就任する。しかし、株下落市場であり会社経営は悪化した。そこで合併する事にしたが、経営難は続き、合併したパートナー達から解雇の通知を受ける事になりウェリントンを去った。しかし、ウェリントンが保有するらファンドは独立した組織であり、ファンドのCEOに就任した。そのファンドでの役割は、管理のみであり運用•販売はなく苦戦した。運用は指数に連動するのみで専門的知識は不要な事、販売はお客様から近寄ってくると言う方式をとる事で役割の範囲を拡大しバンガード社の基礎を作った。起業家の3つの精神とは、①自分の王国を築く夢と意識を持つ事②克服して成功しようと言う意志を持つ事③創造によって活力と才能を発揮する喜びを持つ事の3点である。この観点でボーグル氏自身を起業家であるかをチェックしているが、明確な回答は避けている。
第21章 リータシップについて 目的意識
ボーグル氏はこの章で、リーダーシップとは何か?を、バンガード社の経営者として述べている。リーダーシップとは、以下の9つの視点が重要であると述べている。
•心の準備ができている事 ~幸運な事が現れ、それに気づく事が大切。
•先見の明がある事 ~不透明な状態でも次が見通せる事が重要
•目的意識 ~投資家に奉仕する事にブレない事
•情熱 ~十分強く長続きする静かな情熱が必要である。
•奉仕者と考える事 ~周りの人を高い所に導きたいと言う強い想い
•失敗 ~失敗の経験は重要
•決意 ~粘り強く決意を持ち続け目標に達成する
•忍耐 ~初めから上手くいく事はなく辛抱して良好な状態を待つ
•勇気 ~目標達成までには紆余曲折があり勇気を持ってゴールに向う姿勢が必要
これらが、リーダーシップの本質であり、バンガード社を設立し成功させたボーグル氏の意識である。また、以下の内容も注目に、値する。マネージメントとは、「目的を達成する為に人々に仕事をさせる事」である。一方、リーダーシップとは「目標を掲げビジョンを持ち人々を喜んで運動に参加される事」である。
言葉の力は大切である。慎重に言葉を選んで使う事である。
従業員ではなく乗組員+顧客ではなく依頼主+商品ではなくミューテュアルファンド
使う言葉に注意してリーダーとして、投資家•乗組員に繰り返し自分のビジョンを語り、あらゆる階層と親近感を持てる様に、実物の人材であるとわかる様に自分の個性と特徴を伝える事がリーダーには大切である。
第22章 人間について 顧客と乗組員
バンガード•ボーグル氏にとって大切な物は、人間としてな顧客•乗組員である。バンガードという会社は、顧客•乗組員を生身の人間として考え全力を尽くして奉仕するという哲学に依っている。顧客は投資家であり、この顧客に対して「正直」である事を人間重視の第1の目標としている。全ての情報を公開して常識に訴るのである。第2の要素は、「誠実さ」である。会社の利益と顧客の利益がバッティングした時、迷わず顧客第1に判断するのである。第3の要素は「公正な態度」である。この実例として、短期投資を希望する投資家に対して、「その業務はバンガードとしてその投資はしない」と通達する事である。短期的には、バンガードも儲ける事は可能であるが、その様な短期投資は最終的には顧客の為にはならないからである。次は乗組員との関係である。乗組員に対しては、乗組員として覚悟を求めている。乗組員の1人でもヘマをすれば船は沈む。乗組員全員の忠誠は大切である。しかし、この関係は一方通行ではなく双方向である。乗組員が会社を愛し大切に思う。MITのハワード•ジョンソンは「個々の構成員がその組織を愛する事の必要性」を述べている。強い組織にはこの愛すると言う事が忠誠心と言う言葉と共に重要である。バンガード社は、乗組員のモチベーションアップの為に、「優秀賞」と「パートナーシップ」の2つの賞を用意している。優秀賞は、個人の成果に対しての報酬であり、パートナーシップ賞は、組織としての成果(例:ファンドを低コストにするアイデアや税金対策等)である。
※多くの乗組員からボーグル氏への絶賛が述べられている。
最後にここまでバンガード社には紆余曲折があつたが、成功と言える程、大きな会社に成長した。これは、「人間を事業の中心に据える」決意であり哲学である。
終わりに
世紀末の現段階は、大恐慌の時代ととても良く似ている。しかし、常識を持って考えれば、長期投資がより大きな成功に繋がるのは必然である。ミューテュアルファンド業界を1人1人生身の人間としての投資家を大切にする業界構造に変更する必要があると信じて止まない。
コメント