航路を守れ

■航路を守れ  初版201891日  

この本は彼の死去の4か月前に発行された本で彼の人生の総括的な位置付けであるのでこの本から紹介していく。本の構成は以下の構成から成り立っている。

  • 第1部 バンガードの物語
  • 第2部 バンガードのファンド
  • 第3部 投資運用の将来
  • 第4部 思い出

の4部から構成されている。

この本の、ボーグル氏が89歳で自分の人生を振り返り、現在は巨大企業となったバンガード社がどの様に発足・発展したのか、また、その商品であるファンドをどの様な考えで開発・成長させたのか、そしてその大きくなったファンドの抱える課題を述べ、最後に思い出と共に全ての感謝するという構成からなっている。死去するケ月前の執筆・発行であり人生を全て振返り万感の想いを込めた内容となっている。

「航路を守れ」という言葉が繰り返し出てくるが、バンガードという会社が荒波の中でどの方向で進むのかを常に考えているが、はじめに決めた正しい航路を守り続ける事の大切さを繰り返し述べており、社会的な貢献・倫理に基づいた考え方・生き方を航路という言葉に込めている魂から発した言葉である。

「航路を守れ」とは、長期的視点を持ってぶれる事なく賢く決めた航路を確実に守り抜く事である。 様々な反対、障害に遭いながらも自分達が決めた航路を何十年も守り続ける事は、想像以上に厳しいが、ボーグル氏はこれを堅守した。

 1974年に開始されたバンガード社のインデックス投資は初めは散々な言われ様で、資金も集まらず500社の株を買うことができなかった。また、他社も同様のインデックス投資ファンドを売り出したが、上手く行かなかった。しかし、徐々にマネーが集まり、1995年には多くの賞賛を得るに至った。20年に渡る粘り強い活動が実を結んだのである。バフェットからも賛辞を受けた。サミュエルソン博士からも賛辞を受ける事ができた。これはできてしまえば、当たり前に見えるが、逆風の中でよく成功したものだと思う。低コストで運用せずひたすらBAY&HOLDする事は簡単ではない。他の投資会社からは「金融業界は敗者の論理」と思わせる内容であり勝ち馬になるまでの精神的な苦労は想像するに余りある。 成功の秘密は、顧客第一主義である。

  • 余り資産のない人にも利用可能な事
  • 広範囲なSP500に連動している事
  • 手数料が、0.2%と低い事
  • 売買回転率が低い
  • ボラティリティが小さく分散が効いている事  ※サミュエルソン博士の指摘でもある。

第1部「バンガードの物語」

本書籍の主要な内容は、に込められている。この部では年代毎にTOPICSが述べられており

  • 第1章:1974年 予言
  • 第2章1945~1965年
  • 第3章1965~1974年
  • 第4章   インデックスファンド革命
  • 第5章1974~1981年
  • 第6章1981~1991年
  • 第7章1991~1996年
  • 第8章1996~2006年
  • 第9章2006~2018年

の9つの章から構成されている。

第1章:最重要な部分は、1974年、ボーグル氏がウェリントンを解雇されバンガード社を作りインデックス運用を開始した点である。この部分が初めに記載され、次から各年代毎に会社の経緯が記載されている。

第2章:1945年から1965年は、経歴の紹介でありボーグル氏が大学を卒業してウェリントンに入社して事、ウェリントンは当時の最高に憧れられる会社であった事が伺われる。10年で会社の創始者であるモルガン氏の後継と考えられる様になった。

 ボーグル氏の信条は常に普通の人である一般の投資家に寄り添うものであった。また、当初のウェリントンも同様な保守的なファンドであった。

第3章:1965年から1974年は、ボーグル氏にとって辛い時期であった。アメリカ金融業界自体が投資から投機に傾き、GO GO FANDやNIFTY FIFTYの様な短期的な投機でのやり取りがブームとなっていきウェリントンの経営は苦しくなった。ボーグル氏は、他社との合併を考え実行した。スタートアップの様な4人が作る会社と合併時期、その4人に株の40%を渡す事になった。そして経営はどんどん悪くなり、その4人は経営の失敗の責任をボーグル氏に押し付けウェリントンのCEOを解任した。これに対してボーグル氏はウェリントンの傘下の各々の独立したファンドのCEOになり対抗した。その独立したファンド会社は、管理のみをファンドの実施する会社となった。この会社の名前がバンガードである。これは1798年ナイル海戦でのネルソン提督の艦隊の旗艦戦の名前でありボーグル氏にとって大変覚悟の名前である。この会社は投資の管理のみを行う事になり、真に投資家の為になる仕事に集中できる形態になった。

 ※大変苦しかったであろう。この本を書きたくなった気持ちが理解できる章だった。この会社が将来大きく成長するとは誰も思わなかっただろう。多分、ボーグル氏自身もその1人であろう。よくぞ成功したものだ。投資家の為になる事、普通の人の年金を大きくすると言う理念、社会的貢献こそが、成功の礎であると思う。素晴らしい人生である。尊敬に値する。

第5章:1974年から1981年1974年に設立されたバンガード社は1970年代の株式市場の低迷の中で苦しい日々を送った。しかし、75年に管理業務、77年にマーケティングと販売、81年に運用を各々開始し投資会社の三角形を完成させた。これは、SECからの不承認等、敗北の中でのしょうりであり、不安の海を漂いながら、航路を守った」勝利であった。81年にSECからの運用承認を得て、勝利の興奮を得る事になった。ファーストインデックスインベストトラストは77年半ばには1700万ドルに低下したが、エクセターファンドと統合し7500万ドルとし、指定500銘柄全てを保有できた。しかし、82年までは期待外れたとなった。その後、MMF、債券ファンドを作り、この株式市場不況を乗り切った。並行して顧問料の引き下げを継続的に実施した。投資家のメリット最大化の価値観を守る「航路を守れ」を堅守する哲学を決して忘れなかった

第6章:1981年から1991年。80年代はバンガードにとって素晴らしい10年であった。会社の資産、業界シェア、SP500指数等全てが大きく成長した時である。MMF、債券領域でのインデックス投資導入が会社の業績アップに大きく貢献した。2つの危機である「地方債市場の危機」と「ブラックマンデー」である。共に乗り越えて会社は更に強くなった。その後、32のファンドを加え、ずっと「航路を守り続けた」

第7章:1991年から1996年。この期間はバもバンガード成長の時であった。この5年でバンガードの資産は770から2360$へ上司し、業界シェアも5.3から7.0%に拡大した。飛躍の期間である。 グロースとバリューの2つのSP500を作り、バランス型ファンド、REITにもインデックスを導入した。 93年には報酬変更な際、取締り会に従来は毎回承認を得る必要があったが、これを不要とする仕組みに変更したが、ボーグル氏が離れてからは、後々のバンガードの経営者はコストを上げる事にこれを活用した。ボーグル氏の想いとは異なる結果となった。会社とは多くの人が参加し難しいものである。しかし、ボーグル氏としては「航路を守った」

第8章:1996年から2006年。この時期、バンガードの資産は2360から11,227ドルに上昇した。シェアは7.0から11.1%へ上昇した。軌道にのり順調な期間である。 この期間での大きな変化点はETFの登場である。バンガードもETFに参画したが、ボーグル氏は広く分散され、頻繁な売買がなされない前提ならは受け入れられると述べている。

第9章:2006年から2018年。この時期はバンガード成長の時期である。バンガードの資産は1.1兆ドルから5.0兆ドルに増加し、シェアは11.1から23.8%に上昇した。バンガード、ブラックロック、ステートストリートの3社でインデックスミューチュアルファンド資産の80%を占め、米国企業の株の20%を保有し、その影響力が無視できない状況である。これらの成功はバンガードの投資家FIRSTの姿勢の結果である。但し、過去その時代を飾った冠企業はMIT、IDS、フィデリティ等、全て次の時代には大きくは成長できなかった。これらの事実を踏まえバンガードは「航路を守れ」と戒めなくてはいけない。

第10章:思いやり。創始者として想い。バンガードの創始者として、大切なことは人材である。バンガードの価値観を共有して献身的な人材を育成すること。これが会社として重要だあるが、これの具体化としてバンガードバートーナーシッププランを創立した。忠誠心は双方向として、従業員を大切に想う事があげられる。

バンガードの価値観  熱意を持て 、恐るな 、俊敏であれ 、確信を持て 、堂々とあれ

第1部の後には、第2部「バンガードのファンド」、第3「部投資運用の将来」、第4部「思い出」が記載されている

第2部 バンガード社のファンドを紹介

  • ウェリントンファンド
  • インデックスファンド
  • ウィンザーファンド
  • プライムキャップファンド
  • 債券ファンド

の5つの主要ファンドを紹介している。 1つ1つのファンドに対して深い想いがあると感じられた。

第3部 投資運用の将来 

投資運用について語っているが、現在、及び、将来に抱える課題を述べている。

•ファンド業界のミューチュアル化

この章ではファンド業界の在り方を述べている。ファンドの経営者は自分の利益ではなく、投資家の利益を優先する倫理が必要であると主張している。

•金融業界からSP500に対する批判

金融関係者の利益を下げるミューチュアルファンドは金融業界から批判をうけているが、これは投資は誰の為か?を考えれば、この批判は無意味とすぐに判断できる。 ファンドマネージャの取り分が多きすぎるので投資家の不利益となっている。

・学会からの批判

機関投資家の影響力が、あまりに大きくなり社会への悪い影響の心配が生じている。ある業種の全ての企業の株を支配する事で競争が働かなくなる可能性がある為である。

・インデックス投資運用会社の寡占化

バンガード、ブロックロック、ステートストリートの3社で80%の資産を有する状態となっており他社の参入が困難な状態である為、これらファンド運用会社の社会的な影響力が多いくなりすぎている。また、これらから、貧富の差の拡大が懸念されている。

•2030年金融期間法

1940年に策定された投資会社法は現在も80年近く施行されているが、現状に合わなくなってきている。

 第4部 最期の思い出

「航路を守れ」とは、短い人生の中に必ず起きる浮き沈みを乗り越え、豊かで尊敬に値する人生を十分に生きるための優れたルールである事を、伝えたい。

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